静岡市で空き家を所有しているものの、「売るべきか、貸すべきか、それとも残しておくべきか」と迷っている方もいると思います。
静岡市の空き家の規模感
2018年の47,900戸・14.4%から、空き家数・空き家率ともに増えています。このうち、相続した実家がそのまま残っているような「使いみちの決まっていない空き家」は一部です。
一方、市の空家等対策計画では、賃貸・売却用などとは異なる「その他の住宅」について、対策を行わなければ2032年に22,600戸まで増えると推計しています。市はこれを2022年時点の推計値である17,500戸程度に抑えることを目標にしています。
これまでこのサイトでは藤枝市や島田市、焼津市の空き家について個別に書いてきましたが、実は一番人口の多い静岡市についてはまとめて扱っていませんでした。この記事では、市の実態調査データも踏まえながら、静岡市で空き家を持て余している方に向けて、まず確認したい4つの進め方を整理します。
最初に確認したい4つの進め方
空き家をどうするかは、「売る」か「貸す」かのどちらかだと思われがちですが、実際にはもう少し選択肢があります。大きく分けると、売却・買取、賃貸活用、管理、相続・家財整理の4つです。このうち相続・家財整理は最終的な着地点というより、名義や家財を整理して次の判断に進むための前段階にあたります。
静岡市の所有者アンケートでは、「特に考えていない」と回答した人はわずか5.2%で、多くの方が売却・賃貸・解体など何らかの方向性を検討していることが分かっています。一方で、静岡市空き家情報バンクを「知っている」と答えた人は25.1%にとどまっており、活用を考えていても、市の制度まで十分に知られているわけではないことが分かります。まずは4つの進め方がそれぞれどういうものかを押さえておくと、自分のケースがどれに近いか判断しやすくなります。
1売る(売却・買取)
古家付きのまま売る、更地にしてから売る、買取業者にそのまま引き取ってもらうなど、売却にもいくつかの進め方があります。静岡市の所有者アンケートでも、「建物付きで売却したい」が20.7%と最も多い回答でした。
「古家付きのままでいくらになるのか」「更地にする費用をかけるべきか」といった判断は、物件ごとに事情が違うため、査定を受けながら考えるのが現実的です。
2貸す(賃貸活用)
手放すことに抵抗がある場合は、賃貸として活かす方法もあります。水回りだけリフォームして貸し出す方法のほか、DIY可能型の賃貸として、入居者に手を加えてもらいながら住んでもらう形も選択肢のひとつです。
同じ静岡市内でも、駅からの距離、周辺の賃貸供給状況、駐車場の有無、建物の状態によって貸せる条件は大きく変わります。「静岡市だから貸せる」と決めつけず、想定できる賃料と必要な修繕費を確認したうえで判断することをおすすめします。
3管理する
売るか貸すかをすぐに決められない場合は、いったん管理サービスを使いながら方針を考えるという選択肢もあります。月額7,700円(税込)から、定期巡回や郵便物の確認、換気などを代行するサービスです。
静岡市に寄せられる管理不全な空き家についての相談では、「敷地内の雑草や草木の繁茂」が434件と最も多く、次いで「建物の倒壊のおそれ」が311件となっています。市はこうした「管理のうっかり」を防ぐことに重点を置き、所有者向けの庭木・雑草の無料点検といった取り組みも行っています。「今すぐ売る・貸すは決められないが、近隣に迷惑をかけたくない」という段階でこそ、管理サービスが役に立ちます。遠方にお住まいで、静岡市の実家に頻繁に通えない方にも検討しやすい方法です。
4相続・家財整理をする
そもそも相続の手続きや名義変更が済んでいない、家財が残ったままで次の一歩に進めない、という段階の方もいらっしゃいます。静岡市のアンケートでも、空き家所有者の74.4%が60代以上でした。空き家になったきっかけは「居住者の死亡」が43.7%、「長期入院・高齢者施設等への入所」が24.1%で、合わせて約7割を占めています。高齢になった親の住まいを、家族がどうするか考える場面が多いことがうかがえます。
この場合は、売却や賃貸を考える前に、まず相続と家財整理から着手することになります。相続登記や住所変更登記の義務化についてはこちら、名義が親のままになっているケースについてはこちらで詳しく解説しています。
静岡市空き家片付け事業補助金について
静岡市の空き家情報バンク(市街化区域向け・中山間地域向けとも)に登録した住宅であれば、この補助金を使える場合があります。ごみや家財道具の片付け・処分にかかる費用の2分の1以内(上限20万円)を市が補助する制度です。業者による片付けが条件で、利用を検討する場合は工事に着手する前に、必ず市の住宅政策課へ事前相談してください。
葵区・駿河区・清水区で、空き家事情はかなり違う
静岡市は3区で空き家の状況がかなり異なります。市の実態調査(令和2年度、解決済みを除く2,711件を分析対象としたベース)によると、その54.5%が清水区にありました。葵区は24.2%、駿河区は21.3%です。旧清水市にあたる清水区は、港町・工業エリアと住宅地が混在するエリアで、接道に問題のある空き家の割合(34.8%)も3区で最も高くなっています。
| 区 | 空き家の割合 | 評価ランクC(大破損)の割合 | 接道に問題のある割合 |
|---|---|---|---|
| 清水区 | 54.5% | 11.6% | 34.8% |
| 葵区 | 24.2% | 10.2% | 32.9% |
| 駿河区 | 21.3% | 13.0% | 28.7% |
意外なのは駿河区です。3区の中では空き家の数こそ最も少ないものの、大規模な修繕や除却の検討が必要とされる「評価ランクC」(主体構造部に著しい損傷があるなど)の割合は駿河区が最も高くなっています。数は少なくても、建物の傷みが大きい空き家が駿河区にも一定割合確認されているということです。
葵区は静岡駅前の市街地から、井川・梅ヶ島といった中山間地域(通称オクシズ)まで含む非常に広いエリアです。市街地向けとは別に、中山間地域向けの「中山間地域空き家情報バンク」や「中山間地域住宅改修補助金交付制度」という独自の制度が用意されており、移住希望者とのマッチングを目的とした取り組みが進められています。
建物の状態にも地域差があります。空き家の約8割(79.7%)は旧耐震基準(昭和56年以前)で建てられており、また市の調査では、災害リスクの高い地域で空き家の割合がやや高くなる傾向も確認されています(内水浸水想定区域内に35.4%、津波浸水想定区域内に15.5%が立地)。
静岡市では東静岡駅北口のアリーナ整備など、大規模なまちづくりも進んでいます。ただし、再開発があるからといって、市内すべての空き家が同じように売りやすく・貸しやすくなるわけではありません。駅距離や接道、建物の状態などによって市場性は大きく異なります。この点は「再開発が進む静岡、実は空き家の『明暗』が分かれ始めています」でも詳しく書いています。
どれを選べばいいか分からない場合
ここまで見てきたように、静岡市の空き家は区によっても、建物の状態によっても事情が違います。市の調査でも、所有者の多くが「何かしたい」と考えている一方、相談先や制度の認知度はまだ高くありません。どれが合うかは物件の状態や立地、ご家族の状況によって変わるため、迷っている段階でも一度状況を整理してみることをおすすめします。
まとめ
静岡市の空き家は、売る・貸す・管理する・相続整理をするという4つの進め方で考えることができます。静岡市(葵区・駿河区・清水区)で空き家についてお悩みの場合は、どの進め方が合いそうか分からない段階でも、お気軽にご相談ください。
この記事のデータ出典
- 静岡市「(一財)静岡市土地等利活用推進公社の業務のご案内」(令和6年10月11日 市長定例記者会見資料1)/総務省「住宅・土地統計調査」にみる静岡市の空き家推移(2023年:346,100戸・52,700戸・15.2%、2018年:333,100戸・47,900戸・14.4%)
- 静岡市空家等対策計画(令和5年3月改定版):区別の空き家データ、所有者アンケート、相談内容、耐震・浸水リスクのデータ、「使用目的のない空き家」の目標値
- 静岡市公式サイト:静岡市空き家片付け事業補助金の制度内容(https://www.city.shizuoka.lg.jp/s7345/s013030.html)
- 東静岡アリーナの整備費・供用開始時期:日本経済新聞の報道

